日本エコハウス大賞2019

優秀賞

南丸保園の家 MUK+西紋建匠

UA値=0.43W/㎡K C値=0.4c㎡/㎡ 一次エネルギー消費量=566MJ/㎡K

大阪府堺市、仁徳天皇陵古墳にほど近い閑静な住宅街に、延べ床27坪の小さなエコハウスが完成した。三方を隣家に囲まれた西側道路の変形敷地に対し、南の庭を抱き込むようにへの字形に建物を配置。そのため南に開いたプランが可能となり、家の中はいつも自然光で明るく、どの部屋からも庭を眺めることができる開放的な空間が実現した。
外壁には付加断熱を採用し、冬はキッチンに設置した床下エアコン1台で、夏は吹抜け上部に設置した壁掛けエアコン1台で、24時間全室を暖冷房する。ここ数年猛暑日が増えた大阪では、夏の快適性が大きな課題になるが、堺市が観測史上最高値を記録した外気温39・7℃のときにも、この家は室温27~28℃(エアコンの設定温度は27・5℃)、湿度50~55%前後を保ち、さらさらとした涼しさを肌で感じられたという。

DATA

施工 MUK+西紋建匠
所在地 大阪府堺市
家族構成 夫婦+子ども2人
構造 木造軸組構法
敷地面積 169.32㎡
延床面積 90.80㎡

省エネルギー性

UA値 0.43W/㎡K
ηA値 2.3冷房期)、1.9(暖房期)
C値 0.4c㎡/㎡
一次エネルギー消費量 566MJ/㎡K
地域区分 6
屋根・天井 高性能グラスウール16K 210㎜
外壁 高性能グラスウール16K 90㎜+50㎜
床・基礎 PSF3種75㎜
「サーモスX」(LIXIL)
気密 ボード気密工法
冷暖房 暖房:床下エアコン
冷房:壁掛けエアコン
給湯 太陽熱利用給湯システム
換気 第3種換気
創エネなど 太陽光発電4.5kW
雨水利用
その他 長期優良住宅(耐震等級2)、ZEH
  • 1階の床面積は64㎡。南側の庭を囲むように部屋を配置。斜めに視線が抜けるため面積以上の開放感がある

  • 南の庭に向いた1階の窓は、庇を取り付けて夏の日射を遮る

  • 和室は、引戸を閉めて個室化できる唯一の部屋

  • 木の家ならではの真壁の内観。キッチン正面は、「彩色和紙」(木曽アルテック)貼りの引違い建具で収納を製作。右半分にはテレビを格納している

  • 吹抜け2階から1階を見下ろす。リビングから玄関ホール、和室までひとつながりの空間となっているのが分かる

  • 道路側では建物の高さを抑え、太陽光発電4.5kWが載る屋根は目立たないようにして景観地区の町並みに配慮

  • アプローチの廻りには草木が植えられ、町に緑を添える

  • 1階玄関を入ると右手に和室、左手に吹抜けのリビング

  • 基礎の内側に75㎜の押出法ポリスチレンフォーム

  • 高性能グラスウール50mmの付加断熱の下地は横胴縁

  • 透湿防水シートの上に通気胴縁を取り付け、外壁下地を張る

  • ボード気密の完了時点で気密測定。内部は防湿シートのみ

  • 平面図 S=1:150

  • 2階の北側に設けられた2つの天窓は、採光だけでなく、夏の排熱の役目も果たす

  • キッチン背面のキャビネットの格子部分には床下エアコンを格納。1階の吹出し口は全部で5カ所。洗面室のタオルもよく乾く。また、冷蔵庫近くに非常用コンセントを設置し、災害時には太陽光発電による電気を使用できるようにしている

  • 矩計図 S=1:60

審査員講評

コンパクトな家ですが、設計者の狙いどおり伸びやかな広がりを併せもっています。水廻りを集中させた家事動線も使い勝手がよく、女性目線の設計の魅力が光っています。また、ひし形の敷地に建物を「への字形」にレイアウトすることで、太陽の光を迎え入れるような暖かな空間がイメージできました。吹抜け部分だけ斜めに構えた外観は「どんな家なんだろう?」と興味がわきます。シンプルななかにも品があり、街ゆく人たちがワクワクできる建築の楽しさを秘めています。