日本エコハウス大賞2019

集合住宅・小規模施設部門最優秀賞

ノミネート
No.10

独立型発電のエコ民泊 富津ゆめゆめハウス

ゆめゆめ+水田和弘+菅沼建築設計

断熱等級6(0.31W/㎡K)

名作「吹き抜けのある最小限住居」(設計:増沢 洵/1952)を源流とした9坪ハウスを高断熱・高気密にしてパッシブハウス化した民泊施設である。持続可能で安心・快適・自由な暮らしをテーマに、熱効率の良い極小の立方体形状にこだわっている。屋根一体型太陽光パネルと蓄電池を組み合わせて、エネルギー消費を最小限に抑えた自給自足の発電ライフを実現。周辺の自然環境に呼応する電線のないオフグリッドシステムも特徴だ。家主不在型の民泊施設とすることで家主は多拠点生活も実現できる。民泊の利用者は、「富津ゆめゆめハウス」での体験を通じて持続可能で自由な、新たな暮らしのヒントを得ることができる。

DATA

企画・プロデュース ゆめゆめ
設計 水田和弘+菅沼建築設計
施工 菅沼建築設計
所在地 千葉県富津市(6地域)
家族構成 2人(民泊時:3人まで)
敷地面積 640.59㎡(193.77坪)
延床面積 68.74㎡(20.79坪)
竣工年月 2024年5月

省エネルギー性

断熱性能(UA値) 等級6(0.31W/㎡K)
日射取得(ηA値) 冷房期1.1 暖房期1.6
気密性能(C値)
屋根・天井 高性能グラスウール24K420mm
外壁 高性能グラスウール16K105mm+フェノバボード60mm
床・基礎 フェノバボード90mm
クリプトンガス入りトリプルガラスアルミ複合樹脂窓「EW」(LIXIL)防犯フィルム入り
暖房設備 6畳用エアコン「エオリアCS-223DFL-W」1台(パナソニック)
冷房設備 6畳用エアコン「エオリアCS-223DFL-W」1台(パナソニック)
給湯設備 ガス給湯器プロパンガス用 野外壁掛形24号
「GQ-2439WS-1」(ノーリツ)
換気設備 全熱交換型第1種換気ダクトレス方式「せせらぎAQ」
(パッシブエネルギージャパン)
創エネ設備 蓄電器「Tesla power wall」13.5kW2台屋根一体型太陽光電「Roof-1」8.14kWh
耐震性能 等級3(N値計算による品確法性能表示)
その他 耐風等級2
  • 周辺の自然環境と景観を生かすため、空中に線のない完全なオフグリットシステムを採用した。その結果、周辺環境の電柱や電線による景観被害をなくした。海に面した西側は、杉材30mm厚のすのこ壁(ファサードラタン工法)を選択。

  • 西側以外の壁はシックなダークグレーのガリバリウム鋼板の組み合わせにして、周辺の自然環境に調和し、経年変化にも強くサステナブルで環境になじむ外観を心がけた。

  • 9坪ハウスの特質をエコな観点から捉え直し、持続可能なくらしへの新たな建築アイテムとして価値付けをした。9坪エコハウスによる民泊体験。未来を見据える新たなエコライフ体験と他拠点生活の可能性の提供と発信。

  • 9坪ハウスは、極小ではあるが、1階の四畳半4つと2階の四畳半3つと吹き抜けを組み合わせることで、さまざまなライフスタイルや環境に合わせられ、かつ一体感があって狭さも感じない、家族が一つになれる素晴らしい基本プランである。誰もが使用する民泊利用を前提にするため、大型の収納以外は、極力扉やつけない棚をうまく使用することで、直感的に使えるよう配慮して滞在ができるよう心がけた。

  • 増沢 洵(まずざわ まこと)氏の極小住宅の名作「吹き抜けのある最小限住居」(1952)を源流とした9坪ハウスを高断熱・高気密化にパッシブハウス化して屋根一体型太陽光パネルと高性能蓄電池を組み合わせることで、エネルギー消費を最小限に抑え、自給自足の発電ライフを実現する。

審査員講評

性能面での素晴らしさはもちろんですが、民泊施設に太陽発電を取り入れて、完全なオフグリッドに挑戦している点が注目されます。今後、旅行需要が伸びていくなか、環境に負担をかけず、景観を損なわないことは大切なポイントです。さらにゼロカーボンでつくられていることは、日本人と外国人の双方にとってインパクトがあり、安心感を与えることでしょう。民泊を通じて多くの人が高断熱住宅や独立型発電のメリットを体感でき、波及効果を期待できる作品です。