日本エコハウス大賞2019

リノベーション部門最優秀賞

ノミネート
No.6

黒門通の住宅

髙橋勝建築設計事務所

断熱等級5(0.59W/㎡K)

京都市黒門通、世代をまたいで住み継がれる二世帯住宅への京町家の改修である。省エネルギーの観点では、まず、輸送エネルギーを削減するため、地域木材・地域人材を採用。また、解体エネルギーの削減として、既存基礎・既存外壁を有効活用した。さらに、工事規模縮小により工事費の縮減も図っている。ランニングエネルギーの削減としては断熱改修を実施。失われていた庭をよみがえらせ、光・風・緑を取り入れる計画で豊かな生活空間を整え、換気エネルギーの縮減にも寄与している。地元大工によって、維持管理され地域の豊かな風景の一部として受け継がれることを期待している。

DATA

設計 髙橋勝建築設計事務所
施工 斉藤工務店
所在地 京都府京都市(6地域)
家族構成 祖父母+夫婦+子ども2人
敷地面積 155.00㎡(46.88坪)
延床面積 197.76㎡(59.82坪)
竣工年月 2022年9月

省エネルギー性

断熱性能(UA値) 等級5(0.59W/㎡K)
日射取得(ηA値) 冷房期1.4 暖房期1.0
気密性能(C値)
屋根・天井 高性能グラスウール16K150mm
外壁 高性能グラスウール16K87mm+「フェノバボード」(フクビ化学工業)40mm
床・基礎 高性能グラスウール16K87mm+「フェノバボード」(フクビ化学工業)40mm
複層ガラス、2重サッシ
暖房設備 壁掛けエアコン30.5kW
冷房設備 壁掛けエアコン25.5kW
給湯設備 エコジョーズ、床暖房
換気設備 第3種換気
創エネ設備 太陽光発電5.2kW
耐震性能 評点1点以上(間口方向1.10/奥行き方向2.24)
その他
  • 建物が面している黒門通は、安土桃山時代につくられた通りで、古来より繊維産業が盛んであり、現在も通りに残っている京町家の格子を見ると染屋格子が多く見られる。改修した建物にも染屋としての経歴が残っており、改修にあたりファサードの意匠は、染屋格子を復元するなど黒門通の風情に配慮しながら整えた。

  • 通りに面した外壁は黒漆喰の左官で仕上げ、古瓦を継続利用とした。また工事は地元大工が行い、枠、軒、うだつの納まりや高欄の擬宝珠など建物の至るところにその美学が潜んでいる。通りの意匠と大工の美学が混ざり合い、通りの豊かな風景の維持・継承に配慮している。

  • 光・風・緑が通り抜けるLDK。今回復活・整備した3つの庭を軸に平面計画を大幅に改変し、光・風・緑が建物内の全ての居室を通り抜ける気持ちの良い空間とした。

  • ゾーニングにおいては、二世帯が適度に独立・交流できるよう、子世帯エリア、親世帯エリアに分け、その間に共有エリアを配置した。各世帯の利便性確保のために既存設備の利用も含めて水回り設備を複数設けている。

  • 今回の改修では断熱改修によるランニングエネルギーの削減に加え、イニシャルエネルギーの削減を意図した。地域の木材・地域の人材を採用することで、これらの移動にかかるエネルギーの削減を意図した。もう一つは、基礎及び外壁の既存部分を最大限に活かし解体を最小限に抑えることで、解体工事及び建築廃材処理にかかるエネルギーの削減を意図した。

審査員講評

性能を高めながらコストを抑え、美しいインテリアに仕上げた努力に敬意を表します。町家の改修で難しい温熱性能の向上については、無断熱の住宅の性能をここまで高めた努力とコストへの目配りに学ぶところが多いです。耐震設計の面では諦めずに基礎改修を行い、耐震性能を確保している点も評価できます。またプレゼンテーションシートが見やすく、改修前の問題点と解決方法が明確に示されている点も説得力がありました。皆さんのお手本になる改修だと感じます。