日本エコハウス大賞2019

全部門グランプリ

ノミネート
No.9

健康に暮らせる快適な社員寮 岩村パッシブハウス

楽園住宅+鎌倉寿建築設計室

断熱等級6(0.3〜0.35W/㎡K)

外国人実習生のための社員寮である。将来は家族向けの共同住宅や事務所などへの用途変更に対応できる設計とした。カーボンニュートラルを見据えて木造を選択。パッシブハウス基準を満たすことで高い省エネ性能を実現した。使用木材の68%が地元産材で、木材輸送エネルギー削減と地産地消を実現している。また、新しい試みとして、地域の東濃桧を使った在来木造軸組構法(金物工法)を木造大型パネルで施工した。建築業界の課題である工期短縮や品質向上のほか、大工の高齢化・人手不足問題への1つの解答でもある。上棟に合わせて「大型パネル施工見学会・セミナー」を開催。次世代の工法を広める活動にも挑戦した。

DATA

設計 鎌倉寿建築設計室
施工 楽園住宅
所在地 岐阜県恵那市(5地域)
家族構成 9住戸(1戸3人想定)
敷地面積 1515.40㎡(458.40坪)
延床面積 690.09㎡(208.75坪)
竣工年月 2022年7月

省エネルギー性

断熱性能(UA値) 等級6(0.3〜0.35W/㎡K)※各住戸
日射取得(ηA値) 冷房期ー 暖房期0.2〜0.3
気密性能(C値) 0.2㎠/㎡
屋根・天井 「ネオマフォーム」(旭化成建材)200mm
外壁 「ネオマフォーム」(旭化成建材)190mm
床・基礎 「ネオマフォーム」(旭化成建材)160mm
木製窓「smartwin」
暖房設備 壁掛けエアコン2.2kW
冷房設備 壁掛けエアコン2.2kW
給湯設備 エコキュート460L
換気設備 全熱交換型第1種換気「LWZ-130J」(日本スティーベル)
創エネ設備 太陽光発電11.22kW
耐震性能 等級3(許容応力度計算)
その他 木造大型パネル工法
  • 690㎡ある共同住宅の建設は一般的にS造やRC造で建設することが多い。今回の外国人技能実習生の社員寮はカーボンニュートラルを見据え木造を選択した。さらにパッシブハウスにすることで高い省エネ性能を実現。

  • 今回の建物に使用した木材は全部で138㎥。構造材が83㎥の内、地元製材所からの東濃桧を43㎥。造作材が55㎥の内、地域材を51㎥使用した。使用木材全体の68%を地元恵那市近隣の地元産材を使い建設している。木材の輸送エネルギーの削減による環境に優しい木材の利用、地産地消で未来の森林環境作りに活かせる木造建築もパッシブ設計である。

  • 地元の東濃桧を柱に使用した在来木造軸組工法(金物工法)を、木造大型パネル工法で施工した。建築業界の課題である工期短縮、大工の高齢化、大工不足、また木造建築の高断熱化が進むにつれて大工に負担のかかる現場作業が増えることで、事故や怪我に繋がるリスクを下げ施工品質を保つ目的で木造大型パネルに挑戦した。

  • 今回の建設地は山間部で冬には氷点下が続く地域である。社員寮はもちろん北向きの部屋もあり日射取得を利用できない部屋もある。しかしパッシブハウスにすることで各住戸の平均UA値が0.3~0.35W/㎡Kと安定しているため方位に関係なく温度低下がしにくく快適な空間が実現した。

審査員講評

外国の方が日本の家に住むと必ず訴えるのが「冬、家の中が寒くてたまらない」ということです。この作品が建つ岐阜県恵那市は冷え込むエリアですが、その地域で世界最高レベルの省エネ性を確保する非常に素晴らしいプロジェクトになりました。地元のヒノキを使った大型パネルの導入など生産性と品質の向上にもチャレンジしています。このようなプロジェクトを多くの方に知っていただき、誰もが健康で安心して暮らせる家が広がっていくことを祈っています。