日本エコハウス大賞2019

大賞

グランドピアノのある家

UA値=0.28W/㎡K C値=0.56㎠/㎥ 一次エネルギー消費量=74.1GJ/戸・年

この家は、積雪量の多い新潟県新潟市に位置している。寒さの厳しい冬でも、自由に活動できる大空間を実現した。
平面はほぼ正方形とし、大屋根の構成で外皮面積をなえるべく小さく抑えている。屋根は非対称な切妻とし、正面から見て右側の水路に雪が落ちるようにしている。妻入りとしているので、落雪があっても安全に家に出入りできる。南北に面する部分には屋根付きの広いデッキを設け、一年を通して半屋外空間を楽しめるようにした。デッキと室内側のベンチのレベルをそろえ、内外の一体感をより強調している。

DATA

施工 オーガニックスタジオ新潟
所在地 新潟県新潟市
家族構成 夫婦
構造 木造軸組構法
敷地面積 256.56㎡(77.62坪)
延床面積 116.92㎡(35.38坪)

省エネルギー性

UA値 0.28W/㎡K
ηA値 1.4(冷房期)、1.6(暖房期)
C値 0.56c㎡/㎡
一次エネルギー消費量 74.1GJ/戸・年
地域区分 5
屋根・天井 高性能グラスウール105㎜×2+ウッドファイバー100㎜
外壁 高性能グラスウール105㎜充填断熱+高性能グラスウール105㎜付加断熱
床・基礎 ポリスチレンフォーム3種B 100㎜+
スカート断熱1m+スラブ下ポリスチレンフォーム3種B 25㎜
APW430、APW431、一部APW330、クレトイシ
気密 JIS-A6930ポリエチレンフィルム防湿層
その他
冷暖房 ルームエアコン(日立)
給湯 エコキュート(日立)
換気 第1種換気(ローヤル電機SE200R)
創エネなど
  • 開放感のある吹抜けリビングにグランドピアノを置き、コンサートホールのような空間に。屋根に施工した室内側断熱材を吸音材としても利用しており、ピアノの音の過度な響きを防いでいる

  • ダイニングからリビング方向を見る。テレビ台を兼ねたベンチ下のガラリには床下エアコンを設置。家具を自由なレイアウトで配置できるよう、南側の窓はあえて腰窓にしている

  • LDK全体を見る。南の庭に面する開口部は、ステンレスのブレースを利用し、壁いっぱいの大開口に。ウッドデッキの出入口は床のレベルを高くしてベンチとし、下部に収納と床下エアコンを設けている

  • ファサードを見る。屋根を非対称な切妻とし、向かって右側の水路に雪を落す仕組み。妻入りとし、落雪にも配慮している

  • 平面図 S=1:150

  • 玄関を外部から見る。屋根付きのデッキで雪から守られている

  • 玄関を内部から見る。玄関内部に設けた引戸を閉めれば風除室にもなる

  • 将来、子ども室として利用するまでは、壁の面積を少なくしてリビングと一体空間にしている

  • 切妻状の屋根は、中央部が暗くなりがち。そこでトップライトを設け、採光を補いながら、教会の光のような象徴的な光で空間を演出している。夏期の熱気抜きとしても有効

  • 屋根の垂木(黄色部分)を専用金物で母屋に固定し、屋根構面の倍率を1.34までに上げている。火打ちは省略

  • 野縁受け(オレンジ色部分)を施工。その後、通気用スペーサーを入れたうえで、高性能グラスウールを充填する。防湿気密層を施工し、野縁(茶色部分)を施工

  • 野縁間にウッドファイバーを充填。その後、塗装したスギ材をスノコ状に間隔をあけて設置。完成

  • 断面図 S=1:200

審査員講評

建築家と地域工務店の異なる得意分野が融合して、ハイレベルな住宅を実現されています。断熱性能も申し分ありません。ピアノを奏でる住まい手に合わせて、天井にウッドファイバーを使った断熱材兼吸音材を採用しています。音のデザインや光のデザインが自然に溶け込んでいる点に好感を持ちました。夏場と冬場の日当たりなど、事前にシミュレーションを行ってしっかりと根拠に基づいた設計ができているところも安心感があります。ピアノの音と光に包まれた、明るく伸びやかな暮らしがイメージできます。