日本エコハウス大賞2019

優秀賞

HYBRID-CAMP 山弘

UA値=0.45W/㎡ C値=ー 一次エネルギー消費量=55.66GJ/戸・年

HYBRID‐CAMP」は、兵庫県淡路島の南部の、のどかな田園風景が広がる風景のなかに建っている。敷地は、比較的交通量の多い道路に面した角地にあり、隣地には大きな桜の木がそびえている。景色に恵まれた南側の庭に面して濡れ縁や土間を設け、屋内と屋外を自然につなぎながら、家族の要望でもあった「サッカーやキャンプなどのアウトドアが楽しめる庭」もかなえている。一方、交通量の多い道路側には駐車場を配して、プライベート空間との区切りの役目を担わせた。
庭には地域の里山に自生している樹木を植え、山採りの庭とした。坪庭や風呂庭、前庭を配置し、これらの合間を縫うように下屋を設けて、各部屋から庭の木々を楽しめるようにした。また、建物の構造材と造作材にも兵庫県産材を採用し、地域に対してもエコな住まいを心がけている。
1階リビング・ダイニングには大開口を設け、庭の景色を楽しむと同時に十分な採光を確保している。軒を深くとり、夏の直射日光を遮っている。一方、計画地で最も多い北側からの風を取り入れるため、北側にも適度に開口部を設置。同じく南北方向に配した吹抜けの階段を通じて、1階の空気を外へ流す働きも果たしている。
南側の屋根には、OM集熱パネルを設置し、日射により温まった空気を床下に送り、コンクリート基礎に蓄熱しながら、家全体を床から温めるよう工夫した。
HEAT20G2レベルやZEH、長期優良住宅といった高性能でありながら、パッシブデザインやパッシブソーラーを活かした「HYBRID」となっている。

DATA

施工 山弘
所在地 兵庫県洲本市
家族構成 夫婦+子ども2人
構造 木造軸組構法
敷地面積 528.71㎡
延床面積 212.26㎡

省エネルギー性

UA値 0.45W/㎡K
ηA値 1.4(冷房期)、2.1(暖房期)
C値
一次エネルギー消費量 55.66GJ/戸・年
地域区分 6
屋根・天井 セルロースファイバー105㎜+セルロースファイバー300㎜
外壁 セルロースファイバー105㎜+イーストボード40㎜
床・基礎 パフォームガード70㎜
トリプルスマージュ+ Low-Eガラス(3層アルゴンガス入)
気密
その他 OMソーラーによって基礎を蓄熱しながら家全体を暖めている。
冷暖房 OMクアトロソーラー(太陽熱床暖房・涼風取り入れ)
エアコンS80UTAXP-W(-C) 26畳用(ダイキン)
給湯 24型エコジョーズ オートタイプ(リンナイ)
換気 OMクアトロソーラー(換気)+第三種換気設備
創エネなど 太陽光発電パネル クアトロDM
  • 一直線に伸びたデッキでは子供たちが裸足で走り回ることができる。春には隣地の桜を望むための花見台になっている

  • 田園風景のなかに佇む。プライバシーを確保しながら、地域に開かれた庭を目指した

  • リビング・ダイニングから開口部を見る。網戸・障子・ガラリ戸を設置し、気候に合わせて調整できるようにした

  • 平面図 S=1:300

  • 庭を見る。濡れ縁、土間、デッキなどを配置し、内部と外部をつないでいる。デッキのレベルはなるべく低くし、庭との一体化を図っている

  • リビングを見る。大きく切り取られた開口部は庭へと繋がる

  • 書斎。床を1段さげることで、空間をさりげなく仕切っている

  • 断面図 S=1:80

審査員講評

この作品を設計した工務店は、地元の山で伐採した樹木を製材・乾燥させて家づくりをしています。木がなければ住宅は建てることができませんから、林業から携わることは工務店にとって非常に価値のあることです。家づくりを中心に、そこに関わる人やモノと連携する姿勢は、地域工務店にふさわしい活動でしょう。地産地消の木材や、自然エネルギーを使ったエコロジカルな設計も素晴らしく、意匠性も高い作品です。工務店の領域を超えて、さまざまな取り組みに真面目に向き合っている姿勢を評価します。