2030年のスタンダード住宅を描こう

日本エコハウス大賞2019

グランプリ

風土と共に育つ家

断熱等級6(0.31W/㎡K)

山とつながる美しい景観をつくる――この家は、山登りが好きな夫婦のための山を望む住まいである。緑豊かな住宅街にある敷地は、高台の南西向き。眺望抜群の好条件だったが、道路側に2mのコンクリート擁壁が立ち、駐車スペースがない点がネックであった。新たにコンクリートガレージをつくるには大掛かりな工事になる。ならば擁壁ごと取り払い、最小限の駐車スペースを設けて山道のようなアプローチにすれば、緑豊かな街並みにふさわしい外構になるのではないかと考えた。既存擁壁をアップサイクルした石積みによる土留めなど昔からある土木技法を用い、2mを登るアプローチを形成した。なお、擁壁の表面コンクリートは土留めの裏込めに再利用している。また、雨水の通り道や浸透させるために掘られた水脈の場所など、完成後には見えなくなってしまう工事を定点観測カメラで撮影し、建て主と共有することで、庭への理解を深めている。建物は、眺望を取り込むように窓を大きく設け、気兼ねなく開放できるように2階リビングのプランとした。夏は2階のエアコン1台で、冬は1階全面に敷いたヒートポンプ式温水床暖房で家全体を整える。

DATA

所在地 神奈川県秦野市(6地域)
家族構成 夫婦+子ども
構造
敷地面積 182.38㎡(55.17坪)
建築面積 55.64㎡(16.83坪)
延床面積 107.64㎡(32.56坪)
設計 パッシブデザインプラス
完成年月所 2022年4月

省エネルギー性

断熱性能(UA値) 断熱等級6(0.31W/㎡K)
日射取得(ηA値) 冷房期:0.9/暖房期:―
気密性能(C値) 0.1㎠/㎡
屋根・天井 高性能グラスウール210㎜+ネオマフォーム40㎜
外壁 高性能グラスウール105㎜+ネオマフォーム40㎜
床・基礎 基礎:防蟻EPS断熱材50㎜(内側全面張り)
サーモスX(LIXIL)+ハニカムサーモスクリーン
暖房設備 土間蓄熱ヒートポンプ式温水床暖房(BEシステム)
冷房設備 エアコン2.2kW(1台)
給湯設備 ガス給湯器
換気設備 第1種熱交換換気VL-15CZーL(三菱電機)
創エネ設備 構造の荷重確保などの将来設置対応
耐震性能 耐震等級3(許容応力度計算)
その他 新住協Q1住宅レベル3、HEAT20 G2
  • 1階の縁側土間。冬はダイレクトゲインで太陽熱を蓄え、夏は夜間換気で庭の涼気を蓄え、昼は2階から降りてくるエアコンの冷風を蓄える

  • 2階のリビングダイニング。外の眺望をとらえて開口を設けている

  • 駐車スペースがないため、土地購入時に減額あり。そのぶんを外構工事に当てることに

  • 災害地の復興や大地の再生に取り組む造園家とともに完成させた駐車スペースとアプローチ

審査員講評

応募作品のなかでもプレゼンテーションがきめ細やかで、説得力があり、非常に魅力的な住宅だと感じました。審査で注目したポイントは2つ。まずは性能面のバランスのよさです。断熱性能・気密性能ともに優れており、空調計画も含めてレベルの高い温熱環境が実現されています。次に家の内と外、さらにその先の街並み・風景までつながるように計画が練られている点も評価しました。既存擁壁を取り除く大胆な外構工事を含めて断面計画しっかりとなされ、全体的に設計力の高い作品だと好感がもてました。