断熱等級6(0.46W/㎡K)
この計画は、築年数不詳の母屋と築40年の離れの2つの建物の解体・増改築を含むリノベーションである。母屋は風格のある古民家だったが、屋根は朽ち、建物も半壊状態だったため再生は不可能と判断した。しかし、立派な母屋をごみとして処分することに違和感を覚え、使えるものは使い、それ以外はできる限り土に還そうと考えた。一方、離れは、現状を生かして「改修棟」として再利用する。
母屋の解体にあたり、瓦の手下ろし作業、構造材を切断して薪にする作業、瓦の再利用のため工事などは、ワークショップを開催し、コストを抑えたい「住まい手」、経験を望む「学生」、それらを「設計者」がつないでDIYで実施。通常では得難い作業機会を創出するとともに、事業として難しいプロジェクトを完遂することができた。1棟分の木材は、3~4年分の燃料(薪ストーブ用)になり、土壁の土や束石、破損した瓦は外構に、きれいな瓦は門の屋根に再利用することで、廃棄物を減らし、新たな建材の仕入れも節約できた。
なお、改修棟は増築部を含め現行法規に適合させて建築確認を行い、かつ長期優良住宅の認定を取得。劣化対策、維持管理・更新の容易性などにも配慮している。また、住まい手がワークショップに参加したことで、自分の家を自分で守るメンテナンス技術も習得できた。
| 設計 | WASH建築設計室 |
|---|---|
| 施工 | 倉昇工務店 |
| 所在地 | 京都府南丹市(5地域) |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 敷地面積 | 206.47 ㎡(62.46坪) |
| 建築面積 | 89.54 ㎡(27.09坪)※改修棟40.75㎡(12.33坪)含む |
| 延床面積 | 114.21 ㎡(34.55坪)※改修棟40.75㎡(12.33坪)含む |
| 竣工年月 | 2022年4月 |
| 断熱性能(UA値) | 等級6(0.46W/㎡K) |
|---|---|
| 日射取得(ηA値) | 冷房期1.5 暖房期1.5 |
| 気密性能(C値) | ー |
| 屋根・天井 | 増築棟 押出法ポリスチレンフォーム120㎜ 改修棟 ポリエステル13K「パーフェクトバリア」 (エンデバーハウス)200㎜ |
| 外壁 | 増築棟 ポリエステル13K「パーフェクトバリア」 (エンデバーハウス)100㎜ 改修棟 押出法ポリスチレンフォーム50㎜ |
| 床・基礎 | 押出法ポリスチレンフォーム60㎜(立上り) 同30㎜(底版) |
| 窓 | 複層アルミ樹脂複合窓「サーモスL」(LIXIL) |
| 暖房設備 | エアコン(14畳用・200V)、薪ストーブ |
| 冷房設備 | エアコン(14畳用・200V) |
| 給湯設備 | エコキュート |
| 換気設備 | 第3種換気 |
| 創エネ設備 | ー |
| 耐震性能 | 等級1以上、上部構造評点1.03 |
| その他 | 劣化対策等級3(長期優良住宅) |
既存状況から母屋を解体して離れを残すことを判断し、徹底的に再利用するというプロジェクトのまとめ方が秀逸です。建物に使われていた土、石、瓦を保存しつつ再利用することは手仕事の醍醐味であり、サーキュラーエコノミーやアップサイクルの観点からも望ましいことです。一方、断熱計画には苦労されたのではないでしょうか。日射計画、視線の計画も練り込まれ、伝統的な技術を継承しつつ、これからのエコハウスの課題も包括していることが最大のポイントです。