日本エコハウス大賞2019

優秀賞

アットホームズ

手の届く価格で建てられるパッシブハウス

UA値=0.258W/㎡K(Q値=0.96) C値/減圧=0.24c㎡/㎡、加圧=0.18c㎡/㎡ 一次エネルギー消費量/−42.59kWh/㎡

 この家が建つ香川県善通寺市は温暖少雨の瀬戸内性気候であるが、決して温暖なわけではなく、クライアントは「暖かい家」を希望していた。そこでエコハウスの基本に実直に従い、パッシブデザインを大きく活用した省エネ性能特化型の家を設計。
 具体的には、外皮面積を極力少なくして熱の出入りの少ない住まいを計画した。南面を多く取れるように東西を長い家にし、開口部は南面に多くまとめた。その他、外皮性能の強化や開口部の日射遮蔽、断熱補強、換気の熱回収を行い、ヒートポンプ・ガス瞬間式併用給湯器など高効率設備を採用。また太陽光発電による創エネルギーに取り組むプラスエネルギーハウスでもある。外装は環境負荷の少ない国産の焼スギを、内装は透湿する珪藻土クロスを選んでいる。

DATA

設計 アットホームズ
施工 アットホームズ
所在地 香川県
家族構成 3人(夫婦+子供1人)
構造 木造在来軸組工法
敷地面積 312. 34 ㎡(94. 48坪)
建築面積 57.97㎡(17.53坪)
延床面積 103.51 ㎡(31.31坪)
完成年月所 2015年8月

省エネルギー性

基礎(下) EPS特号100㎜
壁(充填+付加) HGW40K210 ㎜
屋根 HGW40K315 ㎜
トリプルガラス樹脂サッシ
給湯 ヒートポンプ                  ガス瞬間式併用給湯器
冷暖房 エアコン
換気 第一種全熱交換型 「Royal SE200R」(ローヤル電機)
その他 可変型防湿・気密シート
  • パッシブハウス基準をクリアしている、善通寺TOCOHARU-HAUS。冷暖房負荷はそれぞれ基準である15kWh/㎡以下。ファサード熱損失を抑え、日射取得と遮蔽を考慮している。焼スギ張りは1階のみとし、DIYでのメンテナンスができるよう配慮した。

  • 吹抜けは、面積以上の空間的な広がりを感じることができる。冬期には部屋の奥まで日射を入れ、暖房負荷の低減を図った。また、シーリングファンを併用して、上下階の温度差解消にも役立っており、窓の開閉により排熱もできるように計画されている

  • クライアントの強い希望であったダイニングテーブル一体のオーダーキッチン。大容量のミーレ社製食器洗浄機を備え、共働きであるご夫婦の家事の手間の低減とデザインを兼ね備えている。内部建具はすべて高さ2,400の垂壁がないものを使用し、居室の熱ごもりを低減し室内温度の均一化を狙った

  • 開口部断熱補強
    「ハニカム・サーモスクリーン」(セイキ総業)を吹抜け、浴室を除くすべてに使用

  • 充填断熱+防湿層施工状況
    HGW40Kt=105㎜
    「マグラムダ34」(マグ・イゾベール)
    「ザバーンBF」(デュポン)+「VARIO Multi Tape」(マグ・イゾベール)

  • 吹抜けの開口部は換気を考慮し開閉可能
    サッシは「トリプルシャノンⅡ」( エクセルシャノン)を使用
    南面は「CVDクリアガラス」(エクセルシャノン)
    η値=0.58、Ug値=0.99W/㎡K
    その他の面は「クリアガラス」η値=0.48、Ug値=0.83W/㎡K

  • 開口部日射遮蔽
    「アウターシェード」(YKK AP)を吹抜けを除く南面すべてに使用
    ブラウン色:日射遮蔽係数0.23
    ※一番遮蔽性能が良い色
    玄関ドアは「スウェドア」(ガデリウス)を使用

  • 屋根断熱施工状況
    HGW40K t=105㎜×3層
    「マグラムダ34」(マグ・イゾベール)

  • 付加断熱施工状況
    HGW40K t=105㎜
    「マグラムダ34」(マグ・イゾベール)

審査員講評

 性能とコストのバランスのよさが際立っているエコハウスです。今回の応募作品のなかで断熱性能の数値がトップクラスでした。またプレゼンのタイトルにあるとおり、一般的なサラリーマンが手に入れられる価格で、この高性能住宅が建てられる点に大きな挑戦があります。パッシブデザインのスタンスと、香川県や愛媛県産の地元材や自然素材を積極的に取り入れている点も評価しました。
 性能のよさが群を抜いていましたが、プレゼンシートからもう少しインテリアや、外構などの工夫、その家族の暮らしぶりが具体的にみえてくるとよかったと思います。