日本エコハウス大賞2019

優秀賞

吉岡昌一建築設計事務所

米原パッシブハウス 吉岡昌一建築設計事務所

施工:夏見工務店 構造:ストローグ UA値=0.51W/㎡k ηA値=1.2 一次エネルギー消費量/44.8GJ/年

80歳代の夫婦が暮らす終の住処。夫妻からは、次世代が安心して住み継げる住宅にしてほしいとの要望があった。同じ敷地内に建つ息子夫婦の家と、ちょうどよい距離を保ちながらつながりも持てる配置を検討し、同時に息子夫婦の家の日当りを損なわないよう建物高さにも配慮している。
 敷地東側には畑が広がり、視線が遠くまで抜けるため、パッシブ設計では弱点となる東側に大きく窓を開けたプランとした。その代わり大きな庇を取り付けて、夏はテント生地を低い位置まで張り、低い日射を遮る。一方、庇は透明ポリカにして、冬には日射をたっぷり取得する。  また、将来の介護に備えてアプローチにはスロープをつくり、室内も車いすで生活しやすいように段差をなくしたシンプルなワンルームの間取りとなっている。

DATA

設計 吉岡昌一建築設計事務所
施工 夏見工務店
所在地 滋賀県米原市
家族構成 夫婦(80歳代)
構造 木造軸組+門型ラーメン
敷地面積 410.30㎡
建築面積 138.70㎡
延床面積 84.54㎡
完成年月所 2016年8月

省エネルギー性

UA値 0.15 W/㎡K
η値 1.2
C値 0.4c㎡/㎡
一次エネルギー消費量 43.1GJ/年
地域区分 5
屋根・天井 セルロースファイバー 640㎜他
外壁 スタイロフォーム50㎜+セルロースファイバー745㎜他
床・基礎 セルロースファイバー、ネオマフォーム・EPS50㎜他
木製アルミクラッドサッシ、PVC
熱貫流率 枠:0.7W/㎡K、0.8W/㎡K
     トリプルガラス:0.5W/㎡K
     (日射取得率52%)
気密 可変透湿気密シート「ザバーン(R)BF」
その他 日射遮蔽シート(遮光率90%)
冷暖房 エアコン(消費電力45W)
給湯 エコキュート
換気 第一種換気「FOCUS200」(熱交換効率91%)
創エネなど 太陽光パネル5.04kW
その他 夏季の日射遮蔽シート
  • 東側の屋外屋根は透明ポリカーボネート折板を使い、夏はテントを張って日射 を遮り、冬にはテントを取り外して日当りを確保する

  • 息子夫婦の家と行き来しやすいように玄関は北側に配置、南側は目隠しを立ててデッキテラスとしている

  • 息子夫婦の家と行き来しやすいように玄関は北側に配置、南側は目隠しを立ててデッキテラスとしている

  • 東側外観。夏はテント生地の日射遮蔽シートを取り付ける。全面を遮らずに眺望を確保している。 片流れの大屋根には、太陽光パネル5.04kWを設置しているが、将来増設も可能

  • 息子夫婦の家と行き来しやすいように玄関は北側に配置、南側は目隠しを立ててデッキテラスとしている

  • 平面図S=1:200

  • 内部はLDKと寝室を広いワンルームにまとめたシンプルなプラ ン。東の開口8.46mをとるために、構造計算(耐震強度2)を 行って木造門型ラーメンを採用。床には黒いタイルを敷いて冬に蓄熱する

  • 内部はLDKと寝室を広いワンルームにまとめたシンプルなプラ ン。東の開口8.46mをとるために、構造計算(耐震強度2)を 行って木造門型ラーメンを採用。床には黒いタイルを敷いて冬に蓄熱する

  • 床は白いタイル貼りとして、一部配管ピット部はカリンのフロ ーリング蓋として外してメンテナンスできるようにしている。 ユニットバスは洗面所・便所と一体的に使えるように寝室の裏 側に配置した

  • 床は白いタイル貼りとして、一部配管ピット部はカリンのフロ ーリング蓋として外してメンテナンスできるようにしている。 ユニットバスは洗面所・便所と一体的に使えるように寝室の裏 側に配置した

  • 断面図S=1:100

  • 内部:可変透湿気密シート「ザバーン ®BF」(サンゴバン)を30㎜厚の木材で押 さえることにより、災害時も安心(台風 並みの50パスカルの気圧をかけて気密 検査済)

  • 内部:セルロースファイバーはメーカー 推奨の厚み200㎜ごとに区画して吹き 込み、断熱材の沈下対策を行った。また、 下地は縦・横に組むことで熱橋防止

  • 外断熱(写真奥のスタイロフォーム)+ 内断熱(写真手前のセルロースファイバ ー)で十分な断熱性能を確保。窓を開け ることで簡単に外気温と同じ温度になる

  • 外部:透湿防水シート、タイベックシー ト(デュポン)を木材で押え、連続した 気密性を提案。気密施工の結果、計画換 気・計画空調が実現できる

審査員講評

 屋根、壁、天井にセルロースフ ァイバーを吹き付けた、圧倒 的な断熱性能の高さに審査員全員が注 目しました。岐阜県米原市において、 屋根に600㎜、外壁に745㎜のセル ロースファイバーは過剰ではないかと いう意見もありました。しかし、80 代の住まい手が快適な環境のなかでア クティブな暮らしを送るために選択し たとも読み取れます。実際にどのよう な生活が送られているのか興味があり、 大賞候補に選出しました。今後は、植 栽での日射調整ができるとベターだと 思いますが、消費エネルギーが少ない 設計を評価します。