日本エコハウス大賞2025

日本エコハウス大賞2019

リノベーション部門最優秀賞

ノミネート
No.8

時ヲツナグ家

アティックワークス

断熱等級6( 0.34W/㎡K)

築60年、大阪市内の狭小敷地に建つ、10坪・総2階の家のリノベーションは、「どうすれば住み続けられるか?」という問いから始まった。建替えが難しい敷地条件と老朽化が進んだ構造を勘案し、新築ではなく性能向上リノベーションを選択。地震への備えとして耐震性の向上を、快適な住環境を実現するために、断熱・気密改修の重要性を提案。建物がコンパクトなサイズであることから、既存の構造区画をできるだけ生かし、シンプルなワンフロア構成で無理のない改修計画を進めた。設備機器も道路側にまとめ、景観への配慮を欠かさない。無理なく維持管理できる仕様とし、永く安心して暮らせる住まいへと生まれ変わった。

DATA

設計・施工 アティックワークス
所在地 大阪府大阪市
家族構成 60代夫婦+子ども(成人)
敷地面積 45.78㎡(13.84坪)
延床面積 65.73㎡(19.88坪)/1階32.61㎡(9.86坪)・2階33.12㎡(10.02坪)
竣工年月 2025年1月

省エネルギー性

断熱性能(UA値) 断熱等級6(0.34W/㎡K)
日射取得(ηA値)
気密性能(C値)
屋根・天井 アイシネン(吹付け硬質ウレタンフォームA種3)240㎜
外壁 吹込みロックウール105㎜
床・基礎 床:ネオマフォーム90㎜
「YKK430」(YKK AP)
暖房設備 壁掛けエアコン2.8kW
冷房設備 壁掛けエアコン2.5kW
給湯設備 エコジョーズ
換気設備 第3種換気
創エネ設備
耐震性能 上部構造評点最小値 1.25
その他
  • 大阪市内の狭小敷地に建つ本住宅は、両隣との距離が極めて近く、2方は手も入らないほど、もう1方も隣地まで約50cmという厳しい条件下にあった。このような環境下で、断熱改修・耐震補強・劣化対策に加え、床下の通風確保や小屋裏の換気計画までを行うには、新築以上の施工技術と建築的判断力が求められた。限られた作業空間と既存構造の制約の中で一つひとつ丁寧に最善策を検討し、今後も長く豊かに、安全かつ快適に住み継げる住まいとなるよう、知恵と技術を尽くしてリノベーションを実施した。

  • 既存の構造区画をできるだけ活かし、 シンプルなワンフロア構成で無理のない改修を計画し、無駄なスペースや温度差を排除。小さな住まいながらも空間を広く、快適に感じられる工夫とともに、足触りのやさしい杉材を床に採用し、日々の暮らしの中で心地よさを感じられる仕上がりとしている。また、今後の加齢や将来の変化を見据えて、要所に手すりを設けるなど、安全性にも配慮した計画としています。小さな家だからこそ、暮らしやすさを丁寧に設計した。

  • 上下階をつなぐ通風経路を確保し、1階から2階へと心地よい風が抜ける構成とした。開口部の性能や配置を建物の条件に合わせて柔軟に読み替えることで、無理にパッシブ設計を押し込まず、その場に合った快適性と省エネ性を両立した提案となっている。

  • 都会の中でも昔からそこにあったかのような、周囲の町並みに馴染む親しみやすい外観意匠とした。また、敷地の制約により、室外機などの設備機器がすべて道路側に配置せざるを得ない状況のなか、街の景観に対する配慮として、それらを可能な限り目立たないように設置・カバーし、日常の風景にノイズを生まないよう工夫を凝らしている。主張しすぎない静かな佇まいの中に、公共性と普遍性のある美しさを目指した。

  • 延床10坪という限られた空間の中で、LDK・水廻り・玄関をひとつのワンフロアにまとめるプランとすることで、動線をシンプルにし、廊下をなくすことで無駄なスペースや温度差を排除。小さな住まいながらも空間を広く、快適に感じられる工夫とともに、足触りのやさしい杉材を床に採用し、日々の暮らしの中で心地よさを感じられる仕上がりとしてる。

審査員講評

築60年、厳しい敷地条件に加え、長屋にも似た隣地間隔といった、数々の制約のなかでのリノベーションです。資料を見ていると、できる限りのことに目いっぱい取り組んでいることが伝わってきました。コストをはじめ、耐震補強や劣化対策などに堅実に取り組んでいます。ここまで再生できた理由の1つには技術力の高さがあるでしょう。制約の多い物件でもここまで再生できるという好例であり、古い建物を生かすうえでのモデルとなる優れた設計だと感じました。