断熱等級7（0.26W／㎡K）
市街地の築58年の住宅を良質なストックにすることを設計方針とした。この建物の魅力は、経年美化した構造材、立地の利便性、緑豊かな周辺環境。それらと性能向上をかけ合わせれば、既存住宅リノベーションが新築以上の選択肢になり得ることを伝える場所にしたいと考え、物件選定・購入および設計を行った。改修では、南西側からは緑道の木々を遠景に、敷地内のモミジの木の景色を楽しめる2階リビングとし、断熱施工と日射取得型の窓を採用。食卓から眺める景色は、間口が2.5間とコンパクトな建物形状ながらも、広く感じられる主空間とした。南西のメイン開口にはスクリーンを設置し、日射遮蔽の策も講じている。
| 設計・施工 | 大庄 |
|---|---|
| 所在地 | 新潟県長岡市（5地域） |
| 家族構成 | 夫婦＋子ども |
| 敷地面積 | 155.68㎡（47.09坪） |
| 延床面積 | 91.91㎡（27.79坪） |
| 竣工年月 | 2023年4月 |
| 断熱性能（UA値） | 等級7（0.26W／㎡K） |
|---|---|
| 日射取得（ηＡ値） | 冷房期0.9 暖房期1.3 |
| 気密性能（C値） | 0.8㎠／㎡ |
| 屋根・天井 | 吹込みセルロースファイバー350mm |
| 外壁 | 高性能グラスウール24K120mm＋「ネオマフォーム」（旭化成建材）60mm |
| 床・基礎 | 床：「ミラフォームMKSt60＋100」（JSP）、基礎：パフォームガード100mm |
| 窓 | 南東側、南西側：「APW430（日射取得型）」（YKK AP） |
| 暖房設備 | 壁掛けエアコン5.0kW |
| 冷房設備 | 壁掛けエアコン4.0kW |
| 給湯設備 | エコキュート「EQN46WFV」（ダイキン工業） |
| 換気設備 | 全熱交換型第1種換気「SE200RS」（ローヤル電機） |
| 創エネ設備 | 太陽光発電7.47kW ※「ハチドリソーラー」にて設置工事待ち |
| 耐震性能 | Iw値:1.57 |
| その他 | 劣化対策等級3（ベタ基礎、ホウ酸防蟻処理など） |
敷地は3方向（南東、南西、北西）が開けた角地。既存建物の方位は40度西に振れているが、日射取得を意識したパッシブ設計ができるポテンシャルがあった。性能設計方針は「市街地の 築古既存住宅を 良質なストック と呼べるレベルにすること」 （※既存住宅は購入時で築58年。旧耐震規準）
2階LDKからメインビューを望む南西側のベランダ開口部に日射遮蔽スクリーンを設置、冷房負荷に配慮している。また2階北西側キッチン前の窓は、温熱的には開口部を小さくすべき箇所だが、外皮性能を活かし街路樹の景色を取り込むためW1640×H1170の大きなFIX窓とした。
目標とした断熱性能はエアコン1台でおおむね全館冷暖房可能なレベル。断熱改修内容は「適材適所」「無理なく施工できる手法」を心がけた。Ua値は3.09(W/㎡K）から0.26(W/㎡K）へ向上し、目標値0.34(W/㎡K）5地域G2性能をクリアしている。
古い建物では経年美化した構造材の美しさも味わえる。既存住宅の魅力（チャームポイント）と、性能向上をかけ合わせれば、既存住宅リノベーションは 新築以下の選択肢では無く、新築以上の選択肢にもなり得ることを示し、伝える事例にしたいと考えた。
周辺環境としても、地方の旧市街地ならば利便性と緑豊かな周辺環境も住まいと結び付けることができる。室内からは緑道の木々を遠景、敷地内のモミジの木を近景とした奥行感がある景色が楽しめる。
まずリノベーションだという点に驚きました。高性能住宅で耐震補強も行い、壁掛けエアコンだけで全館空調を実現。さらに太陽光発電7.47kWも設置予定ということで、性能に関しては満遍なく取り組まれています。そして最も好感をもったのはその佇まいです。ひと目見たときから非常に惹かれるものがあり、とても楽しく暮らせそうな家だと分かりました。最終審査ではより詳しいお話を伺いたいところです。こういうリノベーションがどんどん増えることを願っています。
