日本エコハウス大賞2019

優秀賞

オーガニックスタジオ新潟

女池の家 オーガニックスタジオ新潟

UA値=0.27W/㎡ C値=0.40c㎡/㎡ 一次エネルギー消費量=97.82GJ/戸・年

女池の家」の敷地は、新潟市中央区の住宅街に位置する。前面道路は袋小路のため、車や人がほとんど通らない静かな環境。約95坪の敷地に対し、3台分の駐車場を確保したうえで、緑豊かな庭がある平屋で大らかに暮らしたいという建て主の要望に応えるため、2つの子ども室を除いて、生活に必要な機能はすべて1階に配置し、建物の高さを抑えて、平屋のような佇まいにまとめている。道路と家の間には、植物を植えることで町からの視線を遮り、菜園や芝生、濡れ縁など「過ごす場所」を設けて、使える庭とした。四季の移ろいを感じる住居を実現した。
1階リビング南面には、3間の大開口にして、庭の景色を楽しむと同時に十分な採光を確保。軒を深くとって、夏の日射を遮っている。また、季節や時間に応じて簾戸や障子戸、タープなどで採光を操作する。一方、東西・北面は、窓を極力減らし、熱損失を抑えた。 
暗くなりがちなリビングの北側には、東西に長い帯状の吹抜けを設け、天窓から光を取り込んでいる。吹抜けには白く塗装されたFRPグレーチングを取り付けることで、拡散された柔らかな光が1階リビングに落ちる。
また、吹抜け上部には冷房用エアコンを設置し、夏は冷気を下階へ緩やかに落とす。冬は1階に設置した暖房用エアコンの暖気を2階に送る。さらにこの吹抜けは、通風や家族の気配をとらえる装置としても機能している。

DATA

設計 オーガニックスタジオ新潟
施工 オーガニックスタジオ新潟
所在地 新潟県新潟市
家族構成 夫婦+子ども2人
構造 木造軸組構法
敷地面積 317.0㎡
延床面積 144.57㎡

省エネルギー性

UA値 0.27W/㎡K
ηA値 2.0(冷房期)、2.3(暖房期)
C値 0.40c㎡/㎡
一次エネルギー消費量 97.82GJ/戸・年
地域区分 5
屋根・天井 高性能グラスウール24K360㎜(一部200㎜)
外壁 高性能グラスウール16K120㎜+100㎜
床・基礎 PSFⅢ100㎜+スカート650㎜・スラブ下50㎜
APW430+APW330(YKK AP)
気密
その他
冷暖房 暖房:RAS-ZD28F2(床下AC)(日立)
冷房:RAS-AJ28F(2F吹抜上部)(日立)
給湯 エコキュート(ダイキン工業)
換気 SE200R(ローヤル電機)
創エネなど
  • 緑あふれる庭を楽しむおおらかに暮らす家

  • 庭を望む南側の開口。簾戸と障子戸により光の量を操作する

  • 庭を望む南側の開口。簾戸と障子戸により光の量を操作する

  • 庭を望む南側の開口。簾戸と障子戸により光の量を操作する

  • 緑あふれる庭を楽しむおおらかに暮らす家

  • 平面図 S=1:200

  • 施工10ヶ月の庭(2017年8月)。垂木からタープを張ることで中間領域が生まれ、外部に活動が広がる

  • 幅900、長さ7,200の吹抜け。光、空気、気配を伝える。見切り部材の上には間接照明が仕込まれている

  • 吹抜け上部。FRPのグレーチングは白く塗られ、高窓からの自然光を拡散して下階に届ける。奥には冷房用のエアコンが設置してあり、1台で住宅全体の空調をまかなう

  • 床面付近に設置された暖房用のエアコン。水平方向を強調した家具の一部に組み込まれている

  • 断面図 S=1:200

審査員講評

性能の高さ、美しい意匠、周辺環境と呼応した植栽計画。トータルバランスが良く、作品から真面目さが伝わってきます。プロポーションの美しさや、屋根勾配を変えているところに設計力を感じます。南面の大開口は、この家が建てられた新潟でどのように捉えるか議論に上がりました。しかし、それ以上に簾と障子によって光を操作し、家の内側と外側、家と町をつなげる存在としての「窓辺の美しさ」が際立ち、評価しました。リビングの吹抜けからこぼれ落ちる自然光も、住む人の心をおおらかにしてくれるようです。