日本エコハウス大賞2019

優秀賞

HAN環境・建築設計事務所

アクティブに暮らす、パッシブデザインの家

UA値=0.51W/㎡K(Q値=1.7)

 地域の気候風土、自然の恵みを最大限に生かし、快適な室内環境をつくるパッシブデザインの家と、その建物の仕組みを熟知し、創意工夫を加えながらアクティブに暮らす住まい手。そんな家と建て主の関係をデザインに反映させた。
 敷地は長野県長野市の平野部に位置する。今回の計画では「パッシブデザインの仕掛け×10」「アクティブな暮らし×10」と大きく分けて2つのテーマを設けた。「パッシブデザインの仕掛け」としては機能的で美しい建物を目的に、美しい納まりの工夫をまとめた。また「アクティブな暮らし」では、住まい手がアクティブに楽しく暮らすほど室内環境が快適になることをアドバイスしている。
 省エネルギーはとても大切だと考えると同時に、日々の自然環境に呼応しながら住まい手自ら室内気候を調整する多くの知恵を育む。そういった家と人の関係を築くことに大きな価値がある。

DATA

設計 HAN環境・建築設計事務所
施工 鹿熊組
所在地 長野県長野市
家族構成 4人(夫婦+子供2人)
構造 木造在来軸組工法
敷地面積 217.77 ㎡(65.87坪)
建築面積 81.89㎡(24.77坪)
延床面積 108.98 ㎡(32.96坪)
完成年月所 2015年6月

省エネルギー性

床(基礎断熱) EPSボード60㎜
吹付け断熱材120㎜
屋根・天井 吹付け断熱材180㎜
「サーモスⅡ- H(断熱Low-eAr) ハニカムサーモスクリー ン断熱レール仕様」(リクシル)
給湯 エコキュート
冷暖房 基礎蓄熱式温水床暖房(ヒートポンプ熱源)
換気 第3種換気
  • 建物南側や東側には日射遮蔽機能を重視し落葉高木を配置。北側に常緑樹を植え、夏は室内に取り込む冷気を生成、冬は北風を緩和する

  • 大きな引違い高窓。クレセントの位置を下げることで椅子にのると背の高くない奥様でも開閉が可能。夕方以降冷えた外気がたっぷりと降りてくる

  • 「ハニカムサーモスクリーン」本体を幕板閉じ、左右の断熱レールは枠に半埋め込みにして、視界をすっきりさせた

  • 1階の大部分が土間になっており夏は夜間の冷気を溜め込み、冬はヒートポンプによる床暖房の蓄熱体となる

  • 長野では冬の日差しをしっかり取り入れるように、木製ルーバーの奥行きは短く、間隔は広めに。ただし、目隠しが必要な部分には間に1本追加した

審査員講評

 建築面積81.89㎡のコンパクトで良い設計です。今回の応募作品61点のなかでも目立ってよい設計がされていました。この建物は、パッシブデザインを組み込んだ観点があり、子育て世代の建て主が「住みたい!」と思う要素をふんだんに盛り込んでいると思います。しかしアイデアが詰め込まれた点と相反しますが、今後はもっとシンプルな家づくりにも期待してみては。
 温熱環境の面では、断熱性能を見るとUA値が0.51と一般的な数字です。こちらもまだまだ改善の余地がありますので、さらなるチャレンジに期待しています。