日本エコハウス大賞2019

リノベーション部門大賞

はじめてのエコハウス 水戸の家

UA値=0.28W/㎡K C値=0.3c㎡/㎡ 一次エネルギー消費量=37.42MJ/年

この家は、茨城県水戸市の住宅街に建つ。前面道路側の前庭はコモンスペースとし、木々を植樹してベンチを設け、近隣に憩いの場を提供。周辺環境に配慮するだけでなく、窓の数や位置を検討して外部環境と室内が呼応するよう工夫している。木や石、珪藻土といった天然の素材を用いることで、風土に根ざした住まいをつくり出した。
水戸の冬は気温がマイナス5℃まで下がり、平均気温は新潟市とほぼ同じだが、平均日射熱量は高い。そのメリットを生かすため、窓を南側に集約し、ダイニングなどの床に冷暖房用のパイプをめぐらせて蓄熱槽をつくった。太陽光発電による電気を即時利用し、温冷水を蓄熱槽に送り込むなど、電力会社からの送電に頼らない自立型を目指している。
また、住まいの生涯コストを考えて、この家では温熱性能のほか耐震等級3、耐風等級2、省令準耐火をクリア。意匠・構造・温熱の三位一体の設計がなされている。

DATA

施工 サンハウス
所在地 茨城県水戸市
家族構成 夫婦+子ども2人
構造 木造
敷地面積 249.5㎡
延床面積 106.8㎡

省エネルギー性

UA値 0.28W/㎡K
ηA値 1.6(冷房期)、1.6(暖房期)
C値 0.3c㎡/㎡
一次エネルギー消費量 37.42MJ/年
地域区分 5
屋根・天井 マグブローライト22K 330㎜
外壁 マグブローライト22K 120㎜+マグ付加断ボード32K 60㎜×2
床・基礎 防蟻剤入EPS 100㎜(立上り)+防蟻剤入りEPS 50㎜(スラブ下全面)
木製サッシ+Low-Eトリプルガラス(ノルド)、アルミ木製複合サッシ+Low-Eトリプルガラス(ノルド)、「エルスターX」(LIXIL) 天窓(VELUX)
気密
冷暖房 ルームエアコン、土間蓄熱式冷暖房、除湿型放射冷暖房
給湯 エコキュート
換気 第1種熱交換換気
創エネなど 太陽光発電パネル、蓄電池
その他 耐震等級3、耐風等級2、省令準耐火
  • 黒く塗装した外壁のスギ板は、水戸に昔から伝わる染色技術「水戸黒」から発想したもの。前庭は芝生敷きとし、ベンチをしつらえて近隣の人が多目的に利用できるようにした。ちなみに茨城県は芝の生産量が日本一でもある

  • 畳のリビングには造作ソファを設け、窓越しに北側の庭とのつながりを強調。ソファ背面にはエアコンが内蔵されており、床下を通ってダイニングやキッチン、玄関などに暖気が抜ける

  • キッチンに立った時と、椅子座や畳リビングで床座の場合の視線のバリアフリーを図っている

  • 南側の広々としたデッキ。袖壁や軒、格子戸、植栽などで室内への日射遮蔽を行っている

  • 矩計図 S=1:80

  • 家族の寝室は将来の子ども部屋。自立するまでは、親子で肩を寄せ合って寝る時期を大切にしている

  • 螺旋階段を上がった2階。階段上部には冷暖房用のエアコンを設置しており、夏はこの1台で冷房をまかなう

  • 内外の壁を同素材にすることで、自然環境が室内へと入り込むような印象に。窓上部にはハニカムスクリーンを設置

  • 平面図 S=1:200

  • 玄関は土間の素材を変えて、下足位置を設定。段差をなくすことで広がりを演出した。玄関にも蓄熱冷暖房システムを導入している

審査員講評

まず、周辺環境と呼応した佇まいの美しさに目を引かれました。前庭をコモンスペースに開放し、町に憩いの場を提供する計画も素晴らしいと思います。素材、空間、光を考慮した設計力に加えて、温熱・耐震設計も兼ね備えている総合力の高さを評価しました。平面形状の凹凸と、南面の庇の長さが多少気になるという意見もありましたが、設計者の力量もあり、真面目に考え抜かれた設計ができているところに好感がもてました。審査員一同、「もっと詳しく知りたい」と感じた家です。