日本エコハウス大賞2019

優秀賞

藤城建設

玄杢舎(GenMokuSya)

UA値=0.19W/㎡ C値=0.4c㎡/㎡ 一次エネルギー消費量=83.6GJ/戸・年

北海道には、その風土・気候に合った素朴で品のある家が似合う。「玄杢舎」は25坪の平屋住宅で、高性能設備に頼りすぎないローテクでシンプルな温熱デザインと、小さくても豊かに暮らせる住み心地のデザインの両立を目指した。外観は、大地に力強く佇む姿をイメージし、高さを抑えながら構造フレームを強調して安定感をもたせている。
また、南西角地の敷地はスクールゾーンということもあり、積雪のことも考慮して、高い塀は設けていない。見晴らしをよくしたことで、ご近所や子どもたちとあいさつを交わすなど地域とのつながりも促している。
「玄杢舎」は、建物ボリュームを抑えることで、誰もが手に入れることのできる価格帯で実現している。LDKは一体となっているが、リビングは小上がりとイングルヌックの2つの居場所に分けている。
また、小さな空間ゆえに家具をつくるような感覚で、隋所に収納機能をもたせて、使いやすい工夫をしている。たとえば、郵便受けは玄関や屋外に取りに行かなくても済むようにダイニング脇の収納家具の中へ投函される仕組みだ。トイレ前の廊下は、幅965㎜とゆったりした動線計画にしつつ、壁には全面障子戸で隠した本棚をしつらえている。来客時には、本棚の障子戸を動かして水廻りを隠すこともできる。同じように洗面室の鏡も横にスライドさせれば、窓を隠す襖の役目を果たす。

DATA

設計 藤城建設
施工 藤城建設
所在地 北海道札幌市
家族構成 夫婦+子ども1人
構造 木造軸組構法
敷地面積 244.00㎡
延床面積 82.82㎡

省エネルギー性

UA値 0.19W/㎡K
ηA値 1.7(冷房期)、1.2(暖房期)
C値 0.4c㎡/㎡
一次エネルギー消費量 83.6GJ/戸・年
地域区分 2
屋根・天井 エスブロウール380~550㎜+ネオマフォーム100㎜
外壁 発砲ウレタン100㎜+ネオマフォーム100㎜+発泡ポリスチレン板60㎜
床・基礎 床:発泡ポリスチレン板140㎜+基礎外断熱発泡ポリスチレン板145㎜
木製サッシ(ノルド)+エルスターX(LIXIL)
気密
その他
冷暖房 暖房:薪ストーブ(+補助床暖房)
冷房:─
給湯 エコフィール(ノーリツ)
換気 ダクトレス全熱交換換気「LT-50eco」(日本スティーベル)
創エネなど
  • 建物の南側をL字にして、庭に面するデッキテラスを設けた。これにより、室内からテラスや庭に視線が抜け、広がり効果を生んでいる。テラスには、ターフやハンモックなども用意されている

  • 南側に設けたイングルヌックは、冬に薪ストーブを囲んでくつろぎ、夏はテラスや庭などとのつながりを楽しむ開放的な場所

  • 南東に向いたコーナー窓は、テラスや庭へ視線が抜けて広がりを感じられる

  • シンプルな温熱デザインの小さな平屋住宅

  • 矩計図 S=1:60

  • 小上がりからキッチンを見る。小上がりの床はコルクを敷いた。造作のソファは張地の色をかえて、リビングどダイニングで切り替えている

  • 日差しが差し込み、、明るいリビングダイニング

  • 木製サッシは片引きにして気密を確保。デッキテラスには透明のアクリル板の屋根が掛けられ、雨の日にも洗濯物を干すことができる。また、ブナの木を植えて、将来、生長したときには木陰をつくる

  • 平図 S=1:150

審査員講評

平家住宅は一般的に建築面積が大きくなりがちです。しかしながら、この住宅は25坪とコンパクトにまとめ、周辺環境に溶け込む美しい佇まいが特徴的な作品です。家族が集まる小さな小上がりの正面には開口部を挟んで駐車スペースがあります。計画されているグリーンカーテンの季節になれば、いっそう住まいの内側と外側のつながり方を緩やかにしてくれることでしょう。UA値0.19W/㎡Kの担保された性能の高さ、直線的なインテリアデザイン、そして比較的リーズナブルな建築費用と、バランスのよい作品です。