日本エコハウス大賞2019

優秀賞

夢・建築工房

和泉町の家

施工:夢・建築工房 構造:國分住宅構造設計 UA値=0.29W/㎡k ηA値=1.9 一次エネルギー消費量/57.9GJ/年

埼玉県東松山市の住宅街。南西角地の敷地は、西側の雑木林からは真夏の昼間でも涼やかな風が吹いてくる。リビングを2階に配置したため視線を気にせず窓を全開放でき、夏の夜には虫の音と心地よい風を感じながら晩酌を楽しめる。一方、暑さや寒さが厳しいときには、高い外皮性能が室内を快適に保ってくれる。
当初、建て主からは延床面積 34 坪 で太陽光発電を載せるという要望だったが、まずは躯体性能を上げて快適に暮らすことを提案。太陽光発電をやめ、その分の費用を外皮性能に充てることにした。そのほかの要望を叶えながら、限られた予算のなかで最大限高性能なつくりにするため、緑の多い周辺環境となじむように、外壁は板張りとし、経年変化したような風合いのある 木材保護塗料(ウッドロンエコ)を建て主と一緒にDIYで塗装した延床面積を 31 ・ 5 坪に抑え、空調や 換気設備もシンプルに設計している。
南面のファサードは外壁に合わせ て暖かみのある木製サッシを採用。FIX窓を取り入れることでコストを抑え、十分に日射を取得。室内側にハニカムブラインドを取り付け、大開口による冬の熱ロスを減らし、夏の日射遮蔽のために外側によしずを掛けるフックを取り付た。冬は日射を取り込み、夏は遮って室内の温度を調節する作業を建て主が無理なくできるように、最初から計画に取り入れた。次の夏、よしずのかかったファサードを見るのが楽しみである

DATA

設計 夢・建築工房
施工 夢・建築工房
所在地 埼玉県東松山市
家族構成 夫婦+子ども
構造 木造軸組構法
敷地面積 165.29㎡
建築面積 52.99㎡
延床面積 104.34㎡
完成年月所 2016年8月

省エネルギー性

UA値 0.29W/㎡K(Q値1.0W/㎡K)
η値 1.9
C値 0.17c㎡/㎡
一次エネルギー消費量 60.9GJ/年
地域区分 5
屋根・天井 高性能グラスウール16K 105㎜x3層(マグ・イゾベール)
外壁 高性能グラスウール16K 充填120㎜+付加90㎜(マグ・イゾベール)
床・基礎 床下:グラスウール32K 80㎜(マグ・イゾベール)
基礎立上り外:EPS 100㎜
窓東西北:APW330真空トリプル、APW430トリプル(YKKAP)
南:木製トリプルガラス、玄関:スウェーデンドアU値0.7
気密 VARIO KB1(マグ・イゾベール)
可変透湿気密シート「ザバーンBF」(マグ・イゾベール)
冷暖房 冷暖房暖房:ルームエアコン 1台 12畳
冷房:ルームエアコン 1台 8畳
給湯 エコキュート(コロナ)
換気 第一種換気システム(パナソニック)2台
創エネなど
その他
  • 緑の多い周辺環境となじむように、外壁は板張りとし、経年変化したような風合いのある木材保護塗料(ウッドロングエコ)を建て主と一緒にDIYで塗装した

  • 開放的な2階リビング。キッチン、ダイニングが面する西側の窓の外には鮮やかな緑が広がる

  • 開放的な2階リビング。キッチン、ダイニングが面する西側の窓の外には鮮やかな緑が広がる

  • 東西の日差し対策に外付けロールスクリーンを設置。上部と左右に枠をつくることで風の煽りを防ぎ、左右の隙間から侵入する日差しも軽減した。南側はハニカムブラインドやよしずを取り付けて季節ごとに対応する

  • 東西の日差し対策に外付けロールスクリーンを設置。上部と左右に枠をつくることで風の煽りを防ぎ、左右の隙間から侵入する日差しも軽減した。南側はハニカムブラインドやよしずを取り付けて季節ごとに対応する

  • 東西の日差し対策に外付けロールスクリーンを設置。上部と左右に枠をつくることで風の煽りを防ぎ、左右の隙間から侵入する日差しも軽減した。南側はハニカムブラインドやよしずを取り付けて季節ごとに対応する

  • 天井に熱だまりが生じないように、建具の高さは天井まで上げて下がり壁をなくし、2階の高所換気窓までスムーズに熱気が排出されるよう設計している。また、間仕切壁にも欄間を設置し、どの部屋にも空気が流れるようにしている

  • 天井に熱だまりが生じないように、建具の高さは天井まで上げて下がり壁をなくし、2階の高所換気窓までスムーズに熱気が排出されるよう設計している。また、間仕切壁にも欄間を設置し、どの部屋にも空気が流れるようにしている

  • 天井に熱だまりが生じないように、建具の高さは天井まで上げて下がり壁をなくし、2階の高所換気窓までスムーズに熱気が排出されるよう設計している。また、間仕切壁にも欄間を設置し、どの部屋にも空気が流れるようにしている

  • 玄関に入ったところから視 線が広がるように主寝室、 畳の間、廊下、土間、階段 とつながりをもたせ、さま ざまな機能を融合させるこ とで楽しい空間を演出した

  • 将来的に太陽光発電を載せら れるように、屋根は南に大き な面積を取れる形状とした

  • 開放的な階段とスリット床によって、吹抜けに代わる風の 通り道をつくり、夏は排熱し、冬は土間で暖められた空気 を2階リビングに送り込む

  • 開放的な階段とスリット床によって、吹抜けに代わる風の 通り道をつくり、夏は排熱し、冬は土間で暖められた空気 を2階リビングに送り込む

  • アプローチにはウッドチップを敷き詰め、 周囲の自然と雰囲気を合わせている。西 側には林と緑をつなぐように複数の植物 を植え、アプローチを緑で彩る

  • 躯体内の配線配管を避けるため、室内 側にスペースを設ける

審査員講評

 コンパクトでかわいらしい佇ま いと、きめ細やかな内装の仕 上がりが印象的です。ディティールま でこだわってプランニングされている 点を評価しました。その一方で、耐震 等級との兼ね合いがあるのか、リビン グの陸梁の納まりに関しては議論にな りました。それらを踏まえても、温熱 環境を意識したパッシブ的なデザイン と、意匠的なデザインが融合して、多 くの方が好感を持でる住まいになって います。極めて高い断熱性を持ちつつ、 意匠を追求している。ハイスペックな 住宅として総合的な設計力の高さを感 じます。